遺言書の種類として、大きく分けて、 普通方式と特別方式との2種類があります。特別方式の遺言は、死亡が間近に差し迫った場合や、船に乗って遭難した場合など、極めて、限定的かつ例外的な状況のときにのみ使用されうるものです。
ここでは、通常の場合の遺言の方式である普通方式遺言の中で、実際によく活用されている「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」についてみてみましょう。
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
作成方法などの違いまとめ
種類 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
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作成方法 | 遺言者が 1.全文 2.日付 3.氏名 を自書し押印する。 | 証人2人以上の立会いの下、 1.遺言者が遺言内容を公証人に口授し公証人が筆記 2.これを遺言者及び証人に読み聞かせまたは閲覧させる 3.遺言者及び証人2人が署名・押印 4.公証人が署名・押印 |
証人 | 不要 | 2人必要 |
印鑑 | 認印可 | 遺言者は実印、証人は認印可 |
遺言書の保管 | 遺言者の保管 | 原本は公証役場で保管 遺言者には正本と謄本が交付される |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 |
それぞれのメリットとデメリット
種類 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
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メリット | ・最も手軽に作成できる。 ・遺言の内容を秘密にしておける。 | ・公証人が作成するので、様式不備で無効になる恐れが少ない。 ・原本を公証役場で保管するので、偽造や紛失の恐れがない。 ・検認手続きが不要。 |
デメリット | ・様式不備で無効になる恐れがある。 ・偽造や紛失、盗難の恐れがある。 ・死後、発見されないことがある。 ・家庭裁判所の検認手続きが必要で相続人の手間がかかる。 | ・公証人手数料などの費用がかかる。 ・公証人との事前打合せ、当日の内容確認などの手間がかかる。 ・証人の立会いが必要になる。 ・内容を公証人と証人に知られる。 |
自筆証書遺言は費用もかかららず手軽に作成できるように思われがちですが、民法の厳格な規定に照らされ無効になることも多く、偽造・紛失の危険もあります。
公正証書遺言は費用がかかるというデメリットはありますが、法律上の形式違反による無効のおそれが少なく、偽造・紛失のおそれも少ないため、安全で確実な遺言方法といえます。当事務所では公正証書遺言をおすすめします。
法改正情報
民法の改正により、2020年7月から法務局での自筆証書遺言の保管制度により改善がはじまりますが、この保管制度をつかうことにより、主に次の3つのメリットがあります。
- 遺言の紛失・偽造・盗難の心配がない
- 形式不備で無効となる心配がない
- 死後の検認手続きが不要になる
現状では自筆証書遺言は遺言者自身で保管し、遺言者の死後、裁判所の検認が必要になります。そのため、上記表に記したような紛失・偽造や、死後の手続き上のデメリットが発生してしまいます。
しかし、この制度をつかうと、上記で示した自筆証書遺言のデメリットがほとんど解消されるため、自筆証書遺言の使い勝手が格段によくなります。また、公証役場で公正証書遺言を作るのに比べ、自分で遺言を書き法務局に行けばいいので、遺言作成のハードルも低くなると思われます。