法的に意味があるものとないもの
遺言には、法的に有効な遺言内容と、法的には意味のない遺言内容に分けられます。
法的に有効な遺言内容とは、法律で定められた方式に従って作成されたもので、法定遺言事項といいます。一方、法的に意味のない遺言内容とは、遺言に盛り込まれていても特に法的効力を有しない内容のものをいいます。「兄弟仲良くすること」「葬儀は親族だけで」のように、自分がこうあって欲しいという想いを遺言に遺したもので、これを付言事項といいます。
法定遺言事項
財産の承継・処分方法
法定相続分と異なる相続割合を指定する「相続分指定」、相続人に何を相続させるか指定する「遺産分割方法の指定」、第三者に対しても財産を与えることのできる「遺贈」といった手段を用いることによって、自分の財産の承継先、処分方法を決定することができます。
相続人の廃除・廃除の取消し
日頃から遺言者に暴力を振るったり、人前で悪態をつくなどの重大な非行をする相続人がいる場合には、相続人から廃除する旨の遺言をすることができます。反対に、生前に相続人を廃除していたが気が変わったという場合には、遺言で相続人の廃除を取消すことができます。
婚外子を認知する
何らかの事情で、婚外子がいたとした場合、生前に認知することはもちろん可能ですが、なかなか踏み切れないことがあります。そこで、遺言による認知が認められており、認知によって自分の死後、婚外子に相続権を遺すことができます。
成年の子どもの後見人・後見監督人指定
自分が亡くなると、未成年の子どもの世話をする人が誰もいなくなってしまうことに備えて、その子どもの財産管理や身上監護をする後見人や後見監督人を遺言で指定することができます。
遺言を執行してもらう人を決める
遺言どおりになるように手続きを進める人「遺言執行者」を指定することです。遺言執行者は、相続人の代理人として、相続開始後に、名義変更をはじめ遺言の内容を実現する責務を負う人のことです。遺言執行者を定めておかないと、相続人全員が手続きに関わる必要があるため、遺産相続がスムーズにいかなくなることも考えられます。相続手続きに精通した法律の専門家を、遺言執行者として指定しておくのもいいでしょう。
遺言書を作成する場合、遺言執行者は必ず指定するようにしましよう。
祭祀承継者の指定
祭祀財産(系譜、祭具及び墳墓)の承継者の指定は遺言事項です。お墓の管理や法要の主宰者をあらかじめ遺言で指定しておくことは現代社会では必要不可欠といえます。どうしても財産ばかりに目が行きがちですが、必ず祭祀の承継者も別途、遺言で指定しておくことをお勧めいたします。
認知症の配偶者の面倒や遺されたペットの面倒をみてもらう
自分の死後、認知症になった妻の面倒を長男に任せ、その代わりに家や土地を相続させる、といった「負担付遺贈」「負担付相続させる遺言」をすることができます。同様に、大切なペットのために「負担付遺贈」の方法により。遺言で世話をしてくれる人に一定の財産を譲るとともに、ペットの世話も合わせてお願いする遺言も可能です。
付言事項
付言事項は法的拘束力はありませんが、遺言者の親族に対する最後のメッセージとなります。特に遺言にて指定した財産の相続分が、各相続人において平等でない場合には、なぜそのようにしたのか、付言事項にてメッセージを残すと、ご遺族も受け入れやすくなるかと思います。
葬儀や納骨のこと
葬儀や納骨のことについてよほど実現が難しいことでなければ、遺族は遺言者の意思を尊重してくれるでしょうから、遺言書に書いておいて損はありません。ただ、生前に葬儀会社と契約を結んだりして、自分自身での準備も行うほうがよいでしょう。
献体・臓器提供のこと
遺言に自分の献体や臓器提供の意思を明確に示しておくと、現実に反映されやすいでしょう。献体については、生前に家族の同意を得たうえで、献体したい大学や団体に申し出て登録手続きを済ませておく必要があります。臓器提供については、臓器提供意思表示カード(ドナーカード)に提供する臓器や連絡先などをすべて自筆で記入します。どちらも、生前に必要な手続きです。
家族へのメッセージ
財産承継や処分の内容について、なぜそうなったのかという理由を、家族への想いとともにうまく盛り込むことで、無用な相続争いを防ぐことにつながります。付言事項で、ぜひとも記載してほしい項目になります。
一言でもいいので、皆様へメッセージを残すことをお勧めします。